おとその由来
「おとそ」というのは、元旦をお祝いするために飲まれるお酒のことです。
おとそというのは漢字では「御屠蘇」と書くのですが、これには邪気を振り払い魂を蘇生するという意味が込められています。
清酒と思っている方も多いようですが、本物のおとそというのは漢方薬が浸されている、いわゆる薬酒であり、1年の健康を祈る意味があります。
おとその由来をたどると、唐の時代の中国までさかのぼります。
当時の中国にあった、大晦日に井戸に漢方薬をつるして、それを元旦に清酒に浸したものを、一番年の若い順番から飲む、という風習がおとその元祖となります。
日本には平安時代の頃に伝わって、宮中での行事で呑まれるようになりましたが、やはり(おせち料理と同様に)江戸時代以降になってから、一般庶民のあいだにも広まっていったといわれています。
おとその飲み方
おとそは、元旦の朝に家族で新年の挨拶をしたら、家族が1年健康で過ごせるようにと祈りながらいただきます。
普通、お酒というのは、その場で一番偉い人や年長者から飲むものですが、おとそはその逆になります。
おとその由来になった中国での飲み方と同じで、年少者から年長者へと盃をすすめていきます。
一方、おとそを注ぐ方の順番としては、最年少者には最年長者というように、飲む順番とは逆の回り方で注いでいくようですが、これは地域によってのしきたりによっても違いがあるようです。
「おとそを盃に注ぐのは、一家の家長の役割」とされている地域もあると聞いたことがありますので、一概にどれが正しいとは言えないかと思います。
ただし、厄年の人は年少者であれ年長者であれ、最後に飲むというのが決まりです。
おとその盃には、厄年以外の人が口にすると災いを追い払うと言われているので、最後に厄年の人が飲めば厄祓いにもなるのです。
おとその盃は、大中小の3段重ねの酒器というのが正式なものですが、これに関しては「正しい決まり」というほどではないようです。
最近では、おちょこを使う家庭も多くなっていて、「おとそ専用」の盃はあまり用意しないのが一般的です。